新型コロナウイルス感染症の世界的流行
2019年12月、中国で発生が報告された新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に世界中に広がった。これほど速いスピードで世界中に広まったのは、グローバル化によって多くの人が観光やビジネスを目的に、国境を越えて移動するようになったことが一因とも考えられている。WHO(世界保健機関)は、2020年1月末に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、3月にはパンデミック宣言を出して世界に警告を発した。
国内の発生状況
日本では2020年1月半ばに国内初の感染者、2月初旬にクルーズ船の乗客から感染者が見つかり、2月中旬には国内初の死者が出た。感染対策グッズであるマスクや消毒液などが全国的に品薄となり、特にマスクは買い占めや転売などが社会問題となった。また、2月末に政府は、全国の小中学校と高校、特別支援学校に一斉臨時休校を要請した。「3密(密閉、密集、密接)」という言葉が感染予防のキャッチフレーズとして使われ、後に流行語大賞に選ばれた。
感染状況の指標と政府の対策
感染状況はステージ1(感染ゼロ散発段階)からステージ4(感染爆発段階)まで4段階あり、医療の逼迫具合、10万人あたりの療養者数、PCR陽性率、10万人あたりの新規報告数、感染経路不明割合の5つの指標で評価される。ステージ3(感染急増段階)、場合によってはステージ2(感染漸増段階)が、まん延防止等重点措置、ステージ4が緊急事態宣言の目安となる。「緊急事態宣言」は、2020年3月に成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく措置で、「まん延防止等重点措置」は、2021年2月 に特別措置法が改正され、緊急事態宣言の罰則規定に過料が追加された際に定められた措置である。緊急事態宣言は都道府県単位、まん延防止等重点措置は市町村単位で発出される。
日本における感染急拡大は、2021年9月末時点で5回あった。
ウイルスの変異と今後に向けて
新型コロナウイルスは短期間で変異を繰り返し、感染力を強めている。第4波からは英国由来のアルファ株へ、第5波からはインド由来のデルタ株への置き換わりが始まった。日本のワクチン接種率は世界的に見て比較的進んでおり、第5波からはワクチン接種の進んだ高齢者の感染が減り、中高年と若者のいわゆる「現役世代」の感染が増えている。厚生労働省は第6波に備え、臨時医療施設、酸素ステーション等の整備を急いでいる。
参考資料
『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』(村中璃子著 光文社新書)
『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(栗田路子/プラド夏樹/田口理穂/冨久岡ナヲ/片瀬ケイ/クローディア―真理/田中ティナ著 光文社新書)