ワクチン開発とワクチン配布
新型コロナウイルス感染症の収束には、ワクチンと治療薬の開発が不可欠である。ワクチン開発には長い期間を要し、史上最速で承認されたと言われる「おたふく風邪」のワクチンでも4年を要した。一方、新型コロナウイルス感染症のワクチンは1年未満という短期間のうちに実用化にたどり着いた。治療薬については、国内でも複数の治療薬が承認されており、世界でも開発が進められている。
決定的な治療薬がない現在、各国はワクチン接種に全力を挙げているが、アフリカの国々など途上国では接種を完了した人がまだ少なく、ワクチンをめぐる格差が広がっている。
世界的に接種が進まなければ、結局はパンデミックを長引かせることになる。途上国にもワクチンを公平に提供するため、WHO(世界保健機関)などが主導して、ワクチンを共同購入し途上国などに分配するCOVAXという国際的な枠組みが2020年に発足した。
新型コロナウイルスの特徴
感染症の多くは、医療体制が整っていないアフリカなどの途上国で流行するが、新型コロナウイルス感染症は欧米諸国など先進国でも感染が拡大し、多くの死者を出している。こうした感染拡大の理由は明確ではないが、ウイルスの強さや変異株の出現、人種による遺伝子の違い、生活習慣による予防効果の違いなどが関係していると考えられている。
医療従事者への負担
日本でも感染拡大に伴い、医療従事者の負担が増加し、一般患者への医療提供にも影響が出るなど、医療現場の逼迫が起きている。「医療崩壊」とは、必要とされる医療資源が、供給できる医療資源より多くなることを指す。日本では一時、病床使用率が政府のコロナ対策分科会が示すステージ4(爆発的感染拡大)の目安となる50%以上となり、「医療崩壊が起きている」とも指摘された。実際、院内感染を警戒しての受診控えや救急車の受け入れ制限、一般手術の延期、外来の休止などで必要な医療が行き届かない事態が発生している。さらに、病床及び医療関係者の不足によって、自宅療養者も多く出た。今後は、想定外の事態にも対応できる医療体制の整備が求められる。
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小論文入試出題例
新型コロナウイルス流行により、人々の行動と社会構造が急速に変化している。それをきっかけに、コロナウイルスとともに生きるwithコロナの世界、コロナウイルス流行後のafterコロナの世界がどうなるか注目されている。問1.withコロナの世界では、どのような医療上の問題が生じたと考えるか、意見を述べよ。問2.afterコロナの世界では、どのような医療技術が求められると考えるか、意見を述べよ。現在の科学技術では実現不可能なものでも構わない。〔問1・問2合わせて800字〕
(2021年度/公立小松大学・保健医療学部・臨床工学科/一般・前期)